Cardano(カルダノ)は、2017年9月に公開されたブロックチェーンプラットフォーム、またはそのプロジェクト名です。プラットフォーム内で扱われるのがADA(エイダ)コインになります。
CardanoはICOで多額の資金を調達し、さらにイ¥ーサリアムの生みの親Charles Hoskinson(チャールズホスキンソン)がプロジェクトの中心となっていることで大きな注目を集めているプロジェクトです。
ADAは対円での最高値では一時約60円に達しましたが、現在は市場全体が低迷していることもあり18~20円での価格となっています。
時価総額では現在第6位となっており、常にトップ10に入り有名銘柄の一つとなっています。
現在の価格だけ見ると買いやすい水準にありますが、最大発行枚数が450億枚とかなり多いことに注意が必要です。しかし総発行枚数1000億のリップルと比較すると今後の評価次第では化ける可能性も十分考えられる銘柄です。
Cardanoプロジェクトのチーム構成
Cardanoプロジェクトは現在リアルタイムで稼働しています。プロジェクトの立ち上げだけ行い放置されてしまう仮想通貨プロジェクトが多い中、毎日ソースがコミットされていることを見ると、開発チームは活発に動いていることが伺えます。
GitHubでCardanoの開発状況が確認できます。
Cardanoのプロジェクトチームは大きく3つのチームで構成されています。
Cardano Foundation(カルダノ財団)
カルダノ財団は、スイスに本拠地を置くプロジェクトの監督機関と位置付けられています。理事長のMichael Parsonsは金融業界出身で現在は、ブロックチェーンや仮想通貨に関するアドバイザーとして活動しているようです。また、イギリスのデジタル通貨協会の創立メンバーで、仮想通貨およびブロックチェーンの普及に尽力している人物です。
この財団は、Cardanoのポリシーを明確にすることと、開発資金を調達することを主な役割としています。
カルダノ財団に関しては、仮想通貨の普及がまだ少なかった2年前にICOを行ったり、その宣伝方法が怪しまれたりと一時期詐欺との噂も飛び交いました。しかし現在では、具体的なプロジェクトの計画が見えてきたことや、開発が絶え間なく進んでいること、それに応えるようにADAの価格が値上がりしたことなどを考えると、市場の疑いはある程度払拭されたと言っていいと思います。
IOHK(INPUT OUTPUT Hong Kong)
IOHKはイーサリアムを作ったCharles Hoskinson(チャールズホスキンソン)らにより創設されたグローバルな研究開発企業です。
Cardanoの他にもイーサリアムクラシックや、QEDITASコインなどのプロジェクトも手掛けています。Cardanoでは、同プラットフォーム上のPosシステムであるOuroboros (ウロボロス)の開発を行っています。
2017年からは東工大との共同研究も行っており、先端技術の開発に積極的な姿勢も伺えます。
わかりやすく言うと、Cardano財団からシステムの外注を受けている開発会社といったところでしょうか。チャールズホスキンソンやその他の開発メンバーを見ると、ブロックチェーンに関する技術力に関しては申し分ない構成だと言えます。
EMURGO
EMURGOは東京に本社を置くCardanoのコンサルティング企業です。全身はCardanoプラットフォーム上で動作するゲーミングアプリの開発会社でした。代表は児玉健氏。2017年設立の若い会社です。
香港やスイスなどにも拠点を持ち、積極的なM&Aでアジア各国にも進出を進めています。
また、ADAをBittrexに上場させ、60億円の資金調達に成功したのはEMURGOの働きだったそうです。
EMURGOは既存の企業に対して、分散型アプリケーションやブロックチェーンの技術を用いて新たなビジネスソリューションを生み出すサポートをするとともに、これから新たなサービスを展開する企業に対してもブロックチェーン技術を用いたビジネスチャンスの提案を行うことを目的としています。
主に東アジアや東南アジアでの金融・物流・規制の問題をCardanoのブロックチェーン技術で解決することも目的としています。
日本おいては大企業がブロックチェーンの開発・研究の中心となっており、ブロックチェーン専門のコンサル企業は数少ないです。その中でEMURGOのグローバルな活動には大変注目できると思います。
EMARGO発のCARDANO紹介動画です↓
Cardanoって使えるの?
Cardanoへの投資を検討するにあたり一番気になるプロジェクトの中身と目的ですが、ロードマップとホワイトペーパーがかなり難しいです。ホワイトペーパー自体にも、
カルダノは多くのオープンソースプロジェクトのように、包括的なロードマップ、また権威のあるホワイトペーパーの策定を行いませんでした。むしろ設計原則、工学的なベストプラクティス、また探求のための方法論を収集し、採用したのです。
と、「よくある漠然としていて自慢ばかりのホワイトペーパーは書きません!」的なことが書かれています。その代わり専門用語が飛び交う難解、複雑な内容となっています。
今回は、ロードマップに注目し、極力かみ砕いて端的な表現に変えて説明したいと思います。
Cardanoのロードマップ
ロードマップではCardanoの大きく4つのバージョンについて書かれています。
- Byron 2017年9月にリリースされた最初のバージョン
- Shelly 非中央集権化 ※2018年第2四半期リリース予定。
- Goguen スマートコンストラクトの統合
- Basho パフォーマンスに関するアップデート
- Voltaire 完成形?
現在はByronの段階にあり、直近にはShellyへのバージョンアップを控え、Goguenの開発にも着手しているようです。各バージョンそれぞれについて、ロードマップを簡単に解説していきたいと思います。
Byron
このバージョンではまだCardanoのPOSシステムであるウロボロスは実装されていません。よって、まだPOSによる報酬を受け取る機能がありません。
ByronではCardanoリリースから間もないこともあり、ユーザー、取引所が扱いやすいシステムを取り入れることで急速な普及促進に重点を置いたフェーズとなっています。Byronでのポイントは大きく以下の二つになります。
取引所でADAを扱いやすく
Cardanoの独自通貨であるADAは現在、Bittrex、Binance、UPbit、Coinnest、HitBTCの5か所に上場しています。これら取引所でADAが扱われるにあたり、以下3つの機能が組み込まれています。
- 多くのユーザー、多くの取引量に耐えられるようパフォーマンスを改善
- 多くの取引所に対応するためのAPIを開発、提供 ※API=ADAの機能を取引所が利用するための入り口
- 取引所での問題解決をスムーズに行う機能の実装、取引所での問題解決専門チームの設置
上場先でより扱いやすく信頼できる通貨を意識した機能が盛り込まれていることがわかります。
ウォレットのログ送信機能の実装
ADAコインを扱うにあたりCardanoではDaedalus(ダイダロス)ウォレットをリリースしています。今後ウォレットの改良を進めていくために、ウォレットで何か問題があった場合にその記録(ログ)を簡単に開発チームに送信できる機能を備えています。
ダイダロスウォレットは公式HPからダウンロードできます。
※Daedalus(ダイダロス)ウォレットついては後に詳しく解説します。
Shelly
非中央集権化が重要目的のバージョンです。また、世の中での実用ベースで様々な機能が実装されるとともに多方面へのプロジェクト拡大も計画されています。Cardanoの基礎が公開され本格稼働する一番重要なフェーズです。やることてんこ盛りです。
- ウロボロス(POS)の統合
- 複数署名方式(マルチシグ)の導入
- ウォレットのアップデート(HDウォレット)
- インセンティブスキームによるコンセンサスと手数料の設定
- 耐量子コンピューター電子署名方式BLISSによるセキュリティ強化
- ウォレットへライトクライアントモード導入
- アドレス短縮による可読性の向上
- オープンかつセキュリティ性の高いP2Pネットワークの構築
- 投票センターの設置
- ペーパーウォレットへの対応
- 開発アプローチ一新によるリリース戦略
- 香港にコワーキングスペースを設置
- 東京で開発者・企業向けのミートアップ開催
- アクセラレーター企業CHINACCELERATOR社、MOX社との提携によるCardano普及の加速化
- LiqEaseのCardano利用
- ベトナムに研究開発拠点を設立
- Emurgoによるアクセラレーションプログラムの立ち上げ
- Z/Yenとのパートナーシップにより多業種との関係構築
- LedgerウォレットのCardano対応
- カルダノデビットカードの発行
- FP Completeによる独立監査の実施
ウロボロス(POS)の統合
ByronのバージョンにはまだPOSが実装されておらず、POSによる報酬もまだもらうことができません。なのでShellyでのPOS実装を持ってカルダノの本格稼働となります。
CardnoのPOSシステムはウロボロスと呼ばれていて、学術機関により独自に開発された革新的なPOSシステムです。この公平性が「インセンティブスキームによるコンセンサス」に関わってきます。
「インセンティブスキームによるコンセンサス」は、簡単に言うと、ユーザーが積極的に承認作業(コンセンサス)に参加したくなる(インセンティブ)ようなPOSシステムということになります。他のPOS通貨では、大量保有者に優遇された報酬が付与されるため公平性において問題視されています。ブロックチェーンでは参加者の承認作業が無くてはならないので、参加者を増やすとともにその数を維持するシステムが必要になります。そのためCardanoでは、より公平な報酬の振り分け方をし、誰でも承認作業に参加するメリットがあるようなPOSシステムの構築を目指していると考えられます。
また、承認作業を一部の参加者に偏らせずランダムに選定することでセキュリティの強化にもつながります。ウロボロスの開発チームはビットコインのブロックチェーンと比較することでより強固なセキュリティを意識して設計されています。
前述にもありますが、ウロボロス開発の特徴と言えば学術機関が中心となって開発されていることです。
コネチカット大学、アテネ大学、エディンバラ大学、オーフス大学、東京工業大学の5つの大学によるチームによって作られた論文をもとに開発されたのがウロボロスです。また、ウロボロスについては改善版として次バージョンOuroboros Praosの論文が学会に提出され承認されたとのことです。
チャールズホスキンソンのTwitterより
Cardano’s Ouroboros Praos has been accepted to Eurocrypt https://t.co/XjJsYo9DM5 (number 67) congratulations to the team and here’s a ranking of conferences for reference https://t.co/4ShRcGy4Cl
— Charles Hoskinson (@IOHK_Charles) 2018年1月18日
ダイダロスウォレットの改良
ダイダロスウォレットはすでに公開されておりトップクラスのセキュリティをもっていますが、ロードマップによると更に使いやすく安全になるそうです。
- HDウォレット対応 これまでの秘密鍵を複数管理する方法から、シードというものから多くの鍵が生成される仕組みになりセキュリティ性が向上します。また、シードの控えがあればパソコンが壊れたりしてもまた元通りに復元することができます。
- ライトクライアントモード ウォレットはブロックチェーンと同期するのに長くて数日の時間を必要としていましたが、信頼できるチェックポイントのみと最初に同期することですぐにウォレットの機能を使うことができるようになります。
デビットカード発行
ADAをカードに送ることで両替なしに世界中で買い物ができるデビットカードが使えるようになるそうです。ビットコインもデビットカードで使えますが、やはり実用ベースで普及が進むのは通貨にとってかなりインパクトのあることです。すでに関連機関との契約が済んでいるとのことですが、公式HPによると詳細は近日発表とのことです。
普及活動と開発拠点の拡大
Cardano開発内容のほかにロードマップではアジアを中心にCardanoを普及させていく具体的な計画が記されています。この辺については営業部門にあたるEMURGOが中心となって活動すると考えられますが、アクセラレーター企業アジア大手のCHINACCELERATORとMOX社に一部を委託していることにも注目です。Cardanoプラットフォームをこれから利用するベンチャー企業には、スタートアッププログラムが提供されるとのことで、スムーズに導入が進むことが期待できます。
Goguen
Goguenのバージョンでは、ブロックチェーンに関する様々な機能が追加されます。
- 複数のブロックチェーン
- 二つの決済方法
- Plutusコア言語の組込み
- IELE仮想マシンの実装
複数のブロックチェーン
GoguenのバージョンのCardanoでは複数のブロックチェーンが機能別に階層的(レイヤー)に構築されます。メインのブロックチェーンは、メインチェーン(決済レイヤー)として、ADAの移動や管理のみに扱われるシンプルな役割とすることで、決済処理に特化させるとともにセキュリティーの強化を目的としています。
その他のレイヤーはサイドチェーンと呼ばれ、様々な複雑な機能を持ったレイヤーが構築されます。その一つとしてスマートコントラクトの機能を実装したスマートコントラクトチェーンがあります。
複数のブロックチェーンのレイヤーを機能別に構築することにより、場面ごとに最適なレイヤーにADAを移動させ処理をより効率的に行うとともに、それぞれのレイヤーの負荷分散ができ、多くのトランザクションに耐えられる拡張性の高いシステムを構築することができます。
二つの決済方法
Cardanoでは、ビットコイン方式(UTxO)の決済方法と、イーサリアム方式の決済方法が用いられます。ビットコイン方式は、メインチェーンの決済レイヤーで用いられ、イーサリアム方式はスマートコントラクトを実装したサイドチェーンで使用されます。
- ビットコイン方式(UTxO) 残高情報をデータとして記録せず、分散するコインの取引情報からアカウントの残高を算出する。また、取引が行われるごとに、コインデータの生成と消費が行われる。残高情報をデータとして保持しないためプライバシーの保護性が高く、アドレスの再利用性も低い為セキュリティも高い。
- イーサリアム方式 単純に残高情報もデータとして記録するシンプルな方式。
二つの方式を用いることで、場面ごとに最適な決済方式で取引の管理ができます。また、二つの決済方式の関連を確実な整合性の元運用することにより、価値の保証がより確実なものになります。
Plutusコア言語の取込み
Plutusコア言語はシンプルなスクリプト言語となっています。Cardanoのスマートコントラクトの開発に利用され、メインチェーンでも使用されます。イーサリアムの開発言語であるSolidityは難解との評判がありますが、Plutusコアは公式によると表現力豊かな反面シンプルで安全に使用できるとのことなので、今後Cardanoの関連アプリ等が開発され世の中に広まっていくには、プログラミング言語の開発のしやすさは大変重要な要素となってきます。
IELE仮想マシンの実装
Cardano上で動作し、ブロックチェーンによる分散型アプリケーションを実現する仮想マシンです。IELEはPlutusコアだけでなく全てのプログラミング言語に対応し、開発者が作成したプログラムを最適化する基盤になります。さまざまな言語に対応されるということはPlutusと同じようにCardanoの普及に大きくかかわってくる部分です。
また、開発者向けに専用の開発ツールなどの提供が予定されており、開発者がスムーズにプログラミングを行う手助けとなります。
ロードマップから見る将来性 まとめ
現在(2018年3月)では、まだベータ版のようなByronがリリースされて次のShellyがリリースされるまでCardanoの詳しい全貌は見えませんが、ロードマップによるとかなり綿密な計画の上でプロジェクトが進められている印象を受けます。正直ここまで技術面まで深く掘り下げて発表しているロードマップはCardanoくらいではないでしょうか。技術的な部分に関してはかなり専門的な内容が多いですが、詳しく読み解くとユーザー向け、開発者向けにより戦略的なシステムの仕様となっていることがわかります。
他の有名通貨のように大手企業との提携など派手な発表が無い代わりに、さまざまなアップデートの情報一つ一つが先進的かつ具体的で信頼できるシステムとなることが期待できます。また、ロードマップでの計画それぞれが大きな開発規模であることや、その数もかなり多いことから開発チームだけではなくプロジェクト全体の規模の大きさが伺えます。法定通貨の代替という大きな目標に最初は疑問を持った人も少なくないと思いますが、ロードマップ・ホワイトペーパーを読み解くことで、将来的な伸びしろにとても期待ができる仮想通貨ではないでしょうか。
公式ホームページでは次のアップデートまでのカウントダウンが行われており、GitHubでも開発が日々進んでいることがわかります。
Cardanoプロジェクト🔥日々研究開発、戦略立て、頑張ってます!
Cardano project ! A lot of things are going on.#Cardano #ADA #blockchaintechnology #カルダノ #エイダコイン #仮想通貨 pic.twitter.com/a8a7YFXNtG— KEN KODAMA (@Emurgo_Ken) 2018年3月13日
Cardano本格稼働となる次のフェーズShellyに移行した場合どこまで価値が上がるのか大変楽しみな銘柄です。